核融合プラズマをはじめとする磁化プラズマの物理や数理に関する理論・シミュレーション研究を行っています

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核融合エネルギーは,地球人類が利用できるエネルギー資源の枯渇問題を半永久的に解決する有力候補です.日本は核融合研究分野において最先端の研究成果を挙げて来ており,また,国際プロジェクトとして建設が進められている国際熱核融合実験炉(ITER)を主導しています.核融合開発研究は既に工学フェーズに入っていると言えますが,一方で,核融合エネルギーを生み出すためのプラズマは,興味深い物理研究の対象でもあり続けています.これはプラズマ特有の幅広い時間・長さスケールや強い非線形性に起因しています.不安定性やその非線形相互作用,波と粒子の相互作用,乱流など,多岐に渡る要素が複雑に絡み合った多種多様な現象が観測されます.私達は,新しい理論的手法やモデルの開発,数値シミュレーション等により,これら複雑現象の奥に潜む物理を解き明かそうとしています.核融合開発という第一義的な位置付けはもちろんのこと,学術研究としての分野横断的広がりにも重きを置いて研究を行っています.このことが,核融合研究が他の科学技術分野から孤立した狭い開発研究になるのを防ぎ,競争力を向上させるために重要だと考えています.


研究テーマ(随時更新)
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磁化プラズマにおける境界層(特異摂動)問題の新解法に関する研究
磁化プラズマの巨視的な運動を記述するために,磁気流体力学(MHD)モデルが広く用いられている.核融合を目指した磁場閉じ込めプラズマに関しても,その力学平衡やAlfven波の安定性問題は核融合研究が始まった当初からの中心的研究課題の1つであり,精力的に研究が行われてきた.中でも,Alfven波の波数ベクトルが閉じ込め磁場と垂直になる場所(共鳴面)は,磁力線の張力が働かなくなることに対応してモデル方程式や解に特異性が現れるため,細心の注意を払った精密な解析が必要となる.核融合プラズマは非常に高温であり,電気抵抗はAlfven波の特徴的な時空間スケールで規格化すると(Lundquist数の逆数)10のマイナス12乗にも達する.磁力線張力が効かなくなる共鳴面の付近では,微小効果である電気抵抗や慣性が相対的に重要な働きをするが,その境界層はプラズマサイズに比べて大変薄く,伝統的には漸近接続理論を用いて研究されてきた.この理論は確立されたものであるが,いくつかの本質的困難と,現実的に不可避な数値計算における適用上の困難がある.これらの困難はいずれもMHDモデルの特異性に起因するものであり,超高温プラズマにおいては境界層問題としての扱いが避けられないことから,核融合研究に古くから残る難問である.我々は,この問題に対する新しい接続解法を開発し,実際に数値計算結果も示してその有効性を示した.
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境界層問題に対して新たに開発した接続解法を用い,内部キンクモードの安定性を解析したときのモード構造.2次の摂動まで取り込むことで,これまで慣性なしの理想MHDモデルで扱われてきた領域に電気抵抗と慣性の効果を取り込むことに成功した.

トカマクプラズマへの不整磁場浸透とプラズマ回転による遮蔽に関する研究
近年のトカマク実験では,装置の構造物等に起因する小さな非軸対称磁場(不整磁場)が,Alfven波を介してプラズマ中で増幅され得ることが深刻な問題となっている.この増幅された磁場は,閉じ込めに有害な影響を与える磁気島を生成したり,閉じ込め改善に有効と考えられているプラズマ回転を減速させたりする.これらは,トカマクの閉じ込めを劣化させ,しばしばディスラプションを引き起こす原因となる新古典テアリングモード(neoclassical tearing mode, NTM)や抵抗性壁モード(resistive wall mode, RWM)に密接に関係している.したがって,不整磁場がプラズマ中に浸透し増幅されるメカニズムとその様子を物理的に理解し,さらには不整磁場の浸透を抑える方法を確立することは,核融合開発において重要なテーマとなっている.我々は,簡約化MHDモデルの数値シミュレーションにより,特にプラズマ回転による不整磁場の遮蔽について研究した.プラズマ回転は,Alfven波の周波数をDopplerシフトさせる.このため,磁気島を生成させる原因となる電気抵抗が働く場所(Alfven共鳴面)が2枚の面にスプリットし,不整磁場の空間的構造と閉じ込め磁場のねじれピッチが共鳴する場所(有理面)からずれる.Alfven共鳴面と有理面の間の距離が,電気抵抗によって決まる抵抗層の幅よりも広くなると,十分な遮蔽効果が得られることを明らかにした. 
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外的に与えた不整磁場がプラズマ中に浸透する様子を簡約化MHDモデルを用いて数値シミュレーションした.プラズマ回転により,Alfven共鳴面が2枚にスプリットし有理面からずれるため,不整磁場のプラズマ中への浸透や磁気島の生成が抑えられる.

シア回転するトーラスプラズマにおけるバルーニングモード安定性に関する研究
磁化プラズマのAlfven波安定性は,磁場閉じ込め核融合プラズマを安定に長時間保持できるかどうかに直結し,精力的に研究が行われてきた.特に,閉じ込め領域の中心と端との間の大きな圧力勾配が駆動する不安定性は,閉じ込め磁場を横切る方向には短波長,磁場に沿った方向には長波長な空間構造をもち,WKB法を用いた簡約化モデルにより解析が行われてきた.これらのAlfven波安定性の問題は,力学平衡状態でプラズマ流がなければエルミート演算子で記述され,そのスペクトル理論は確立されている.しかし,平衡プラズマ流がある場合には,非エルミート演算子で記述され,数学的な理論は確立されていない.近年,磁化プラズマの閉じ込め実験において,プラズマ流が重要な役割を担っていることが多数報告されるようになり,数理的な意義だけではなく,現実的にも重要な問題として改めて注目が集まっている.我々は,流れをもつプラズマのAlfven波安定性に関して,時間依存するアイコナールを用いて短波長近似したモデル方程式(時間依存する係数をもつ1次元連立波動方程式)を数値シミュレーションし,流れシアが圧力勾配駆動の不安定性を安定化するメカニズムを発見した.このメカニズムの研究では,Alfven波の連続スペクトルを点スペクトルで"上手く"近似する正規直交基底を構成するための方法を開発し,時間とともに変化していく正規直交基底系で数値シミュレーション結果を展開することによって,不安定モードから安定モードへとエネルギーが移送されていく様子を捉えることに成功した.
また,この方法を磁気圏型プラズマ閉じ込めに適用したシミュレーションも行い,プラズマのシア流によってバルーニングモードが時間漸近的には安定化されること,しかしトカマクプラズマとは安定化の様子が若干異なることも明らかにした.
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トカマクプラズマにおけるバルーニングモード安定性解析に,トロイダル方向へのシア回転効果を含めたシミュレーション結果.バルーニングモードの振幅は,時間とともに減少していく(シア回転による安定化).

トロイダル回転・非等方圧力をもつトーラスプラズマの力学的平衡に関する研究
磁気圏型プラズマ閉じ込め装置RT-1では,超高ベータプラズマの閉じ込めに成功している.この実験データを解析するために,プラズマのトロイダル回転や非等方圧力効果を含めたMHD平衡を計算するコードを整備した.このコードを用いて,トロイダル回転や非等方圧力効果を含めたときに,磁気圏型の磁場に閉じ込められたプラズマのMHD平衡の様々な性質がどのように変わるのか,またどのような側面に顕著に観測されやすいかを調べている.
なお,このコードを応用して,非中性(純電子)プラズマの平衡状態も計算することができる.
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磁気圏型プラズマ閉じ込めに関する,非等方圧力をもつMHD平衡の計算例.この例では,局所的なベータ値は0.8を超えている.

降着円盤における磁気回転不安定性に関する研究
磁化プラズマは,宇宙にも広く存在する.降着円盤においては,観測されるプラズマの中心天体への降着率を説明するために,プラズマ回転と磁場が相互作用して起こる磁気回転不安定性が注目されている.本研究では,MHDモデルを用い,円盤中心の特異性が磁気回転不安定性に与える効果について調べた.Kepler回転を仮定すると,円盤中心はAlfven波の方程式において不確定特異点となる.このことに起因し,波の周波数は,非可算無限個の点スペクトル(固有値)の連続帯となる.それぞれの点スペクトルに対応する固有関数は,自乗可積分である.
磁化プラズマ中のAlfven波に関して,不安定性を示す点スペクトルが得られることはしばしばあるが,通常は連続帯にはなっていない.そのため,ある初期値からスタートして時間発展を追うと,波の空間構造は,最も成長率(波の周波数の虚部)の大きい固有値に対応する固有関数に程なく一致する.しかし,本研究で得られた結果では,最も成長率の大きい固有値の無限近くに2番目の固有値があり…,という状況になっている.したがって,ある初期値からスタートして時間発展を追ったときに,波の空間構造が成長率の最も大きい固有関数に一致するまでには無限の時間が掛かり,シミュレーションを行う間では波の空間構造は変化し続ける.
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降着円盤中心の特異点に起因する固有値の連続帯のため,磁気回転不安定性の空間構造が時間とともに変化していく様子が観察できる.